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肥満症診療ガイドライン2022の要点|診断基準と薬物療法の位置づけ

自分が肥満症治療の対象か知りたい方へ。肥満症診療ガイドライン2022の診断基準、治療の流れ、薬物療法の位置づけと学会ステートメントを解説。気になる方は健診結果を持って医師に相談を。

医療監修

肥満症・代謝疾患領域の医療情報について、医療ガイドラインおよび医学論文を参考に編集しています。

本記事は肥満症治療に関する医療情報を提供するものです。GLP-1受容体作動薬などの薬剤には副作用やリスクがあります。治療効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。詳細は医師にご相談ください。

公開日: 2026-11-05

この記事について

この記事は、BMIが25を超えていて「自分は治療の対象になるのか」を知りたい方に向けて書いています。日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」をもとに、診断から治療の進め方までを整理します。

あなたも「何度ダイエットしても戻ってしまう」と悩んでいませんか? 続かない原因は、意志の強さだけではありません。体重を元に戻そうとする身体の仕組みも関わっています。 だからこそ学会は、科学的根拠に基づいて「どの人を、どの順番で治療するか」を決めています。


肥満症診療ガイドライン2022とは?

肥満症診療ガイドライン2022は、日本肥満学会がまとめた肥満症の診療指針です。 医療者が診断や治療方針を決めるための共通のものさしにあたります。

いちばん大事なのは、「肥満」と「肥満症」を分けて考えることです。

用語 定義(日本肥満学会)
肥満 脂肪が過剰にたまった状態で、BMI25以上のもの
肥満症 肥満に関連する健康障害があるか、その合併が予測され、医学的に減量が必要な状態

BMI(体格指数)は「体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m」で計算します。 たとえば身長170cm・体重80kgの方は、BMI約27.7です。

ただし、BMIが高いだけでは「病気」とは言えません。 健康障害があってはじめて「肥満症」となり、治療の対象になります。 見た目を整えるための減量と、病気としての肥満症治療は、目的がまったく違うのです。

肥満症の診断基準(BMIと11の健康障害)とは?

ガイドラインでは、BMI25以上で以下のどちらかに当てはまると「肥満症」と診断されます。

  1. 肥満に関連する健康障害が1つ以上ある
  2. 内臓脂肪型肥満である(健康障害がまだ出ていなくても、合併しやすい状態)

内臓脂肪型肥満は、おなかの内側の臓器まわりに脂肪がたまるタイプです。 ウエスト周囲長(男性85cm以上、女性90cm以上)で疑い、CT検査で内臓脂肪面積が100cm²以上なら確定します。

肥満症の診断に必要な11の健康障害

  1. 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
  2. 脂質異常症
  3. 高血圧
  4. 高尿酸血症・痛風
  5. 冠動脈疾患
  6. 脳梗塞・一過性脳虚血発作
  7. 非アルコール性脂肪性肝疾患
  8. 月経異常・女性不妊
  9. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
  10. 運動器疾患(変形性関節症、変形性脊椎症)
  11. 肥満関連腎臓病

耐糖能障害とは、血糖値を下げる働きが弱まった状態です。 健康診断で「血糖」「脂質」「血圧」「尿酸」に印がついた方は、当てはまる項目がないか確かめてみてください。

また、BMI35以上で健康障害がある場合は「高度肥満症」と呼び、より慎重な治療計画が必要になります。

治療の流れ(食事・運動・行動・薬物・外科)は?

治療の土台は、食事・運動・行動の3つの療法です。 薬や手術はその土台の上に重ねる位置づけで、いきなり始めるものではありません。

3%の減量が最初の目標

ガイドラインでは、肥満症の方は3〜6か月で現体重の3%以上の減量を目標にしています。 高度肥満症の方は5〜10%が目安です。

体重90kgの方なら、3%は約2.7kgです。 ガイドラインでは、3%程度の減量でも血圧・血糖・脂質などの改善が期待できるとされています。 大きく減らすことより、無理なく継続できる目標を立てることが大切です。

1. 食事療法

1日の摂取エネルギーの目安は、肥満症で「25kcal×目標体重(kg)以下」、高度肥満症で「20〜25kcal×目標体重(kg)以下」とされています。 目標体重は年齢や合併症などをふまえて医師が個別に設定します。

極端な糖質抜きや断食ではなく、栄養バランスを保つことが前提です。 食事療法の詳しい進め方は「肥満症の食事療法」で解説しています。

2. 運動療法

ウォーキングなどの有酸素運動に、筋力トレーニングを組み合わせます。 運動だけで体重を大きく減らすのは難しいため、食事療法と一緒に行います。 運動には、減量した体重を保つ効果もあります。

3. 行動療法

行動療法は、食べ方や生活習慣の「くせ」を見直す方法です。 体重や食事を記録する、早食いを直す、などが代表例です。 毎朝体重を測って記録するだけでも、自分のパターンが見えてきます。 忙しい方が体質改善を目指すうえで、手間の少ない方法です。

4. 薬物療法・5. 外科療法

3つの療法で十分な効果が得られない場合に、薬物療法を検討します。 高度肥満症で内科的治療の効果が不十分な場合は、減量・代謝改善手術も選択肢になります。 どちらも医師の診断のもとで適応を判断します。

薬物療法の位置づけと対象は?

肥満症の薬物療法は、食事・運動療法を続けても十分な効果が得られない場合の追加の選択肢です。 食事・運動療法の代わりになるものではありません。

ガイドライン2022の刊行時点では、国内で使える肥満症治療薬は、高度肥満症(BMI35以上など)に使う飲み薬のマジンドール(サノレックス)に限られていました。 その後、以下の2剤が肥満症の治療薬として承認されています。

薬剤名 成分 分類
ゼップバウンド チルゼパチド GIP/GLP-1受容体作動薬
ウゴービ セマグルチド GLP-1受容体作動薬

GLP-1は、食後に腸から出るホルモンです。 食欲を抑えたり、胃の動きをゆっくりにしたりする働きがあります。 どちらも週1回、自分で皮下に注射する薬です。

電子添文に書かれている対象

両剤の電子添文では、肥満症の効能に次の条件があります。

  • ゼップバウンド:高血圧、脂質異常症または耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常など)のいずれかがある
  • ウゴービ:高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかがある
  • (両剤共通)食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない
  • (両剤共通)BMI27以上で肥満に関連する健康障害が2つ以上ある、またはBMI35以上

なお、ゼップバウンドを保険診療で使う場合の保険給付は、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病がある場合に限られます。スリマルは自由診療のため、保険は使えません。

効果には個人差があります。 体重の減り方は、用量や生活習慣、体質によって変わります。

なお、両剤には肥満症以外の効能も追加されています。 ゼップバウンドは閉塞性睡眠時無呼吸症候群、ウゴービはMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)です。 スリマルで処方しているのは肥満症の治療のみです。

副作用とリスク

主な副作用は、吐き気・下痢・便秘・嘔吐などの胃腸症状です。 少ない用量から4週間ごとに段階的に増やすのは、こうした症状を抑えるためです。 まれに、急性膵炎や胆のうの病気などの重い副作用が報告されています。 ほかの糖尿病薬と併用すると、低血糖が起こるおそれもあります。

また、妊娠中や妊娠の可能性がある方には投与しません。 必ず医師の診察と説明を受け、医師の管理のもとで使用してください。

糖尿病薬を減量目的で使うリスク

オゼンピック・リベルサス・マンジャロは、2型糖尿病の治療薬です。 肥満症の効能はありません。 減量目的で使うと、本来必要な患者さんに薬が届かなくなるおそれがあります。 副作用が出ても、医薬品副作用被害救済制度の対象外になる可能性があります。 肥満症の治療を考えるなら、肥満症の効能をもつ薬について医師に相談しましょう。

フリマアプリやSNSでの個人間売買、処方薬を他人に譲ることは違法です。 本人使用目的の個人輸入そのものは違法ではありません。ただし偽造品や健康被害のおそれがあり、救済制度の対象にもなりません。

学会の「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」の要点とは?

日本肥満学会は2023年11月、ウゴービの薬価収載にあわせて「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」を公表しました。 背景には、同じ成分の2型糖尿病治療薬が、自由診療で美容・痩身目的に使われる例があったことがあります。

主な内容は次のとおりです。

  1. 肥満症の診断にもとづき、承認された適応を守って使う
  2. 薬物療法は、食事・運動・行動療法を行っても十分な効果が得られない場合に考慮する
  3. 薬が原因の肥満など二次性肥満が疑われる場合は、原因の検査と治療を優先する
  4. 糖尿病治療中の方の低血糖や、精神面の変化などに注意しながら使う

ステートメントが言いたいのは「薬を使えば痩せる」という考え方への注意です。 薬はあくまで、病気としての肥満症を治療する手段の1つです。 詳しくは、日本肥満学会のウェブサイトで原文をご確認ください。

スリマルの治療対象と対象外の方

スリマルはこの考え方に沿い、医師の診断に基づく肥満症の方だけを対象にしています。

治療対象 - 20歳以上 - BMI27以上 - 医師の診断で肥満症に当てはまる方

治療対象外 - 20歳未満の方 - 初診時のBMIが27未満の方 - 美容目的・痩身ダイエット目的の方 - 糖尿病の薬(ビグアナイド系、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジン系、DPP-4阻害剤、SGLT2阻害剤、インスリン製剤など)を処方されている方

授乳中の方、心臓病・脳卒中・腎臓病の既往がある方などは、医師が診察で処方できるか判断します。

診療形態と費用

スリマルはオンライン診療のみで、Zoomで診察します。 対面での診療は行っていません。 自由診療のため健康保険は使えず、全額自己負担です。 診察料と配送料は無料で、処方は1か月分ずつです。

薬剤 用量と料金(税込・1か月分)
ゼップバウンド 2.5mg ¥36,410/5mg ¥55,435/7.5mg ¥78,271/10mg ¥109,868/12.5mg ¥126,500/15mg ¥151,800
ウゴービ 0.25mg ¥19,800/0.5mg ¥31,900/1.0mg ¥50,996/1.7mg ¥100,067/2.4mg ¥129,250

まとめ

  • 「肥満」はBMI25以上の状態、「肥満症」は健康障害を伴い治療が必要な病気
  • 治療の土台は食事・運動・行動療法で、まずは3〜6か月で3%の減量が目安
  • 薬物療法は、土台の療法で効果が不十分な場合の追加の選択肢
  • 学会のステートメントは、肥満症の診断にもとづき適応を守って薬を使うよう求めている

自分が肥満症に当てはまるかは、BMIだけでは判断できません。 健康診断の結果を手元に用意し、まずは医師に相談してみてください。 今の状態を知ることが、無理なく続けられる治療の第一歩です。

出典 - 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」 - 日本肥満学会「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」(2023年11月) - ゼップバウンド 電子添文(PMDA) - ウゴービ 電子添文(PMDA) - 厚生労働省 セマグルチド最適使用推進ガイドラインの留意事項 - 厚生労働省 医薬品の個人輸入について - スリマル 料金

免責事項

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の治療効果を保証するものではありません。治療の適応は個別の診察により判断されます。効果・副作用には個人差があります。気になる症状や治療をご検討の方は、必ず医師にご相談ください。

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