この記事は、体重が気になっていて、がんとの関係を科学的根拠から知りたい30〜50代の方に向けた内容です。
「太っていると生活習慣病になりやすい」という話は、あなたも聞いたことがあるのではないでしょうか。実は、肥満はがんのリスクとも関係しています。この記事では、どのがんとどの程度関係しているのかを紹介します。仕組みや日本人のデータ、減量でリスクが変わるのかについても順に解説します。
肥満とがんの関係が気になる方へ。IARCが示した肥満と関連する13種類のがん、リスクが高まる仕組み、日本人のデータ、減量との関係を出典つきで解説します。体重が気になる方は医師に相談を。
医療監修
肥満症・代謝疾患領域の医療情報について、医療ガイドラインおよび医学論文を参考に編集しています。
本記事は肥満症治療に関する医療情報を提供するものです。GLP-1受容体作動薬などの薬剤には副作用やリスクがあります。治療効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。詳細は医師にご相談ください。
公開日: 2026-11-05
この記事は、体重が気になっていて、がんとの関係を科学的根拠から知りたい30〜50代の方に向けた内容です。
「太っていると生活習慣病になりやすい」という話は、あなたも聞いたことがあるのではないでしょうか。実は、肥満はがんのリスクとも関係しています。この記事では、どのがんとどの程度関係しているのかを紹介します。仕組みや日本人のデータ、減量でリスクが変わるのかについても順に解説します。
肥満は、少なくとも13種類のがんのリスクを高める要因と評価されています。
評価を行ったのは、WHOの専門機関であるIARC(国際がん研究機関)です。IARCは2016年、1,000件以上の研究を検討しました。その結果、「体脂肪が少ないこと」が13部位のがんのリスク低下と関係するという十分な証拠がある、と結論づけています(Lauby-Secretan B, et al. N Engl J Med. 2016)。
ここで押さえておきたいのが、「肥満」と「肥満症」の違いです。
肥満症の診断に使う健康障害は11項目あります。2型糖尿病などの耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、脂肪肝などです(日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」)。なお、がん自体はこの11項目に含まれていません。それでも、肥満が長く続くことは、がんを含む多くの病気のリスクと関係しています。
IARCが「十分な証拠がある」とした13種類は次のとおりです。
| 部位 | 補足 |
|---|---|
| 食道(腺がん) | 胃酸の逆流と関係するタイプ |
| 胃の噴門部 | 胃の入り口付近 |
| 大腸 | 結腸・直腸 |
| 肝臓 | 脂肪肝からの進行に注意 |
| 胆のう | 胆汁をためる臓器 |
| すい臓 | 早期発見が難しいがん |
| 乳房 | 閉経後の乳がん |
| 子宮体部 | 子宮の内側の膜にできるがん |
| 卵巣 | ― |
| 腎臓(腎細胞がん) | ― |
| 髄膜腫 | 脳を包む膜にできる腫瘍 |
| 甲状腺 | ― |
| 多発性骨髄腫 | 血液のがんの一種 |
リスクの上がり方は、がんの種類で大きく違います。同じIARCの報告では、標準体重(BMI18.5〜24.9)の人と比べて、BMI40以上の人の子宮体がんのリスクは約7.1倍、食道腺がんは約4.8倍とされました。一方、大腸がんは約1.3倍(BMI30以上)、閉経後乳がんはBMIが5上がるごとに約1.1倍と、上昇幅は小さめです。
「1.1倍なら気にしなくてよい」と思うかもしれません。しかし、乳がんや大腸がんはもともと患者数が多いがんです。そのため、わずかなリスク上昇でも、集団全体で見ると影響は小さくありません。
肥満した脂肪組織は、ただのエネルギーの貯蔵庫ではありません。全身にさまざまな信号を送る臓器のように働きます。主な仕組みは次の3つと考えられています。
肥満になると、インスリンが効きにくくなります。これをインスリン抵抗性と呼びます。すると、すい臓がインスリンを多く出し続け、血中のインスリン濃度が高くなります。インスリンや、似た働きをするIGF-1(インスリン様成長因子)には、細胞の増殖を促す作用があります。この状態が、がん細胞が増えやすい環境につながると考えられています。
増えすぎた脂肪細胞の周りには、免疫細胞が集まります。そして、TNF-αやIL-6などの炎症物質が出続けます。こうした弱い炎症が長く続くと、細胞のDNAが傷つきやすくなるとされています。脂肪肝から肝炎、肝がんへと進む流れにも、この炎症が関わっています。
閉経後の女性では、主に脂肪組織で女性ホルモン(エストロゲン)が作られます。脂肪が多いほど、エストロゲンも多くなります。これが、閉経後乳がんや子宮体がんのリスク上昇の一因と考えられています。
このほか、腹圧の上昇による胃酸の逆流も関係しています。これが食道腺がんのリスク要因の一つです。また、脂肪細胞が出すホルモンのバランス(レプチンが増え、アディポネクチンが減る)の乱れも指摘されています。
日本人を対象にした研究でも、肥満とがんの関係は確認されています。
国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)をはじめとする日本人の研究でも、肥満と大腸がん、肝がん、閉経後乳がんなどとの関連が報告されています。
日本人の体の特徴として、次の点も知っておきましょう。
一方で、やせすぎもよいわけではありません。日本人の大規模な研究をまとめた解析では、BMIが高い群と低い群の両方で死亡リスクが高くなっていました(Sasazuki S, et al. J Epidemiol. 2011)。つまり、太りすぎでもやせすぎでもリスクが上がるということです。
国立がん研究センターは「日本人のためのがん予防法」で、中高年期の目安を示しています。男性はBMI21〜27、女性は21〜25の範囲に体重を管理することです。極端な減量ではなく、適正な範囲を目指すことが大切です。
肥満と寿命の関係については、肥満は寿命を縮める?BMIと死亡リスクの関係で詳しく解説しています。
減量によってがんのリスクが下がる可能性を示す研究はあります。ただし、結論は出ていません。
これまでの主な研究は次のとおりです。
ただし、これらはいずれも観察研究です。「減量すればがんを防げる」と言い切れる段階ではありません。それでも、肥満症そのものの改善は、糖尿病や高血圧、脂肪肝などの健康障害の改善につながります。
食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない肥満症には、薬物療法という選択肢があります。日本で肥満症の効能をもつ注射薬は、ゼップバウンド(チルゼパチド)とウゴービ(セマグルチド)です。どちらも週1回の自己注射で、少ない量から段階的に増やしていきます。
なお、これらの薬はがんの予防薬として承認されたものではありません。
効果には個人差があり、副作用もあります。主な副作用は、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状です。また、頻度は低いものの、重大な副作用として低血糖、急性膵炎、胆嚢炎・胆管炎・胆汁うっ滞性黄疸などが電子添文に記載されています。ほかの糖尿病の薬と併用すると、低血糖のリスクもあります。必ず医師の診断・管理のもとで使用してください。
また、オゼンピック、リベルサス、マンジャロは2型糖尿病の治療薬です。肥満症の効能はもっていません。体重を減らす目的でこれらを使うと、適切な管理を受けられず、健康被害のおそれがあります。フリマアプリやSNSでの処方薬の売買や譲渡は違法です。
肥満症の治療を始めても、がん検診は別に受け続けることが大切です。体重管理は、がん検診の代わりにはなりません。
国が推奨するがん検診(対策型検診)は次の5つです。
| 検診 | 対象 | 間隔 |
|---|---|---|
| 胃がん | 50歳以上(X線検査は40歳以上も可) | 2年に1回(X線検査は年1回も可) |
| 大腸がん | 40歳以上 | 年1回 |
| 肺がん | 40歳以上 | 年1回 |
| 乳がん | 40歳以上の女性 | 2年に1回 |
| 子宮頸がん | 20歳以上の女性 | 2年に1回(30〜60歳はHPV検査単独法で5年に1回の自治体もあり) |
子宮体がんは、この対策型検診には含まれていません。閉経後の不正出血などがあれば、早めに婦人科を受診しましょう。
肥満症の治療中は、体重が減っていくのが当たり前の状態になります。そのため、病気による体重減少に気づきにくくなることがあります。強い腹痛、首のしこりや腫れ、続く体調不良などがあれば、必ず医師に伝えてください。
スリマルは、株式会社MICINが運営する肥満症のオンライン診療サービスです。
次に当てはまる方は治療の対象外です。
妊娠中または妊娠の可能性がある方には投与しません。心臓病や腎臓病の既往がある方、授乳中の方などは、医師が診察で処方の可否を判断します。
がんのリスクを下げる近道はありません。適正体重を目指すこと、がん検診を受けることを、無理なく継続できる形で積み重ねていきましょう。体質改善の方法に迷ったら、まずは医師に相談してみてください。
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の治療効果を保証するものではありません。治療の適応は個別の診察により判断されます。効果・副作用には個人差があります。気になる症状や治療をご検討の方は、必ず医師にご相談ください。