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肥満症の運動療法|有酸素運動・筋トレの目安と食事療法との組み合わせ

肥満症と診断された方や体重が気になる方へ。肥満症診療ガイドライン2022などをもとに、有酸素運動と筋トレの目安、食事療法と組み合わせる理由、膝痛や心臓病がある方の注意点を解説。始める前に医師に相談を。

医療監修

肥満症・代謝疾患領域の医療情報について、医療ガイドラインおよび医学論文を参考に編集しています。

本記事は肥満症治療に関する医療情報を提供するものです。GLP-1受容体作動薬などの薬剤には副作用やリスクがあります。治療効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。詳細は医師にご相談ください。

公開日: 2026-10-27

肥満症の運動療法とは

肥満症の運動療法とは、医学的に減量が必要な人が、体の負担に合わせて活動量を増やす治療法です。 中心になるのは、ウォーキングなどの有酸素運動です。そこに筋力トレーニングを組み合わせ、食事療法と並行して進めます。

まず「肥満」と「肥満症」の違いを確認しておきましょう。日本肥満学会の肥満症診療ガイドライン2022では、次のように分けています。

  • 肥満:脂肪が体に多くたまった状態で、BMIが25以上のもの
  • 肥満症:肥満があり、それが原因か関係している健康障害がある(または起こると予測される)状態。医学的に減量が必要な病気

健康障害には11の項目があります。たとえば、2型糖尿病などの耐糖能障害、脂質異常症、高血圧などです。 変形性膝関節症などの運動器の病気や、睡眠時無呼吸症候群も含まれます。

同ガイドラインでは、減量の目標を次のように示しています。

  • 肥満症:3〜6ヵ月で、今の体重から3%以上減らす
  • 高度肥満症(BMI35以上):今の体重から5〜10%減らす

いきなり大きく減らす必要はありません。 肥満症診療ガイドライン2022では、3%程度の減量でも血圧や血糖などの数値が良くなる場合があるとされています(個人差があります)。

運動療法の効果

運動だけで減る体重は、それほど大きくないとされています。 それでも運動療法には、体重の数字だけでは分からない効果があります。一般に挙げられている主な効果は、次のとおりです。

  • 内臓脂肪の減少:お腹の内側につく脂肪で、生活習慣病と深く関係します
  • インスリン抵抗性の改善:インスリン(血糖を下げるホルモン)が効きにくくなっている状態の改善が期待されます
  • 血圧や脂質の数値の改善
  • 体重の維持:減らした体重を保つうえで、運動の習慣が役に立つとされています
  • 筋肉量の維持:食事を減らすだけだと、脂肪と一緒に筋肉も落ちやすくなります

ただし、効果の出方には個人差があります。持病や体力によっては、運動そのものが体の負担になることもあります。 自分に合う運動量は、医師に相談して決めましょう。

有酸素運動の目安

結論からいうと、「楽〜ややきつい」と感じる程度の有酸素運動を、1日30分以上を毎日、または週150分以上行うのが基本です。 肥満症診療ガイドライン2022では、運動療法の原則としてこのように示されています。1日30分は、短い運動を数回に分けて合計してもよいとされています。

「ややきつい」とは、どのくらいでしょうか。 目安は「息は少し弾むが、隣の人と会話はできる」くらいです。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、強さが3メッツ以上の身体活動・運動を推奨しています。 メッツ(METs)は、安静にしているときの何倍のエネルギーを使うかを表す単位です。

活動 強度の目安
普通の速さで歩く(分速67m程度) 3.0メッツ
やや速めに歩く(分速93m程度) 4.3メッツ
自転車に乗る(時速16km未満、通勤程度) 4.0メッツ
水中ウォーキング(中くらいの強さ) 4.5メッツ

※ 数値は厚生労働省 e-ヘルスネットのメッツ表より。

厚生労働省の同ガイドでは、成人の目安として次の点を挙げています(推奨シート:成人版)。

  • 歩行と同じかそれ以上の強さの身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上)
  • 息が弾み、汗をかく程度の運動を週60分以上

30分まとめて時間が取れなくても大丈夫です。10分の運動を3回に分けても、活動量を積み上げられます。

筋力トレーニングの目安

筋力トレーニング(レジスタンス運動)は、週2〜3日が目安です(健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023)。 レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかけて鍛える運動のことです。有酸素運動に加えて行うことが勧められています。

減量中に筋肉が落ちると、基礎代謝(何もしなくても使うエネルギー)も下がりやすくなります。 筋トレには、この筋肉の減少をおさえる役割があります。

自宅で、道具なしでできる例を挙げます。

  1. 椅子スクワット:椅子から立つ・座るをゆっくり10回
  2. 壁腕立て伏せ:壁に手をつき、腕を曲げ伸ばしする
  3. かかと上げ:椅子の背につかまり、かかとを上げ下げする
  4. 膝つきプランク:膝をついた姿勢で、体をまっすぐ保つ

1種目10〜15回を1〜2セットから始めましょう。 動作中は息を止めないことが大切です。息を止めて力むと、血圧が急に上がりやすくなります。

食事療法と組み合わせる理由

肥満症の治療は、食事療法・運動療法・行動療法を組み合わせるのが基本です。 運動で使えるエネルギーは、思ったほど多くはありません。

運動だけで体重を減らそうとすると、かなりの運動量が必要になります。 一方で、食事を減らすだけでは筋肉が落ちやすく、リバウンドの原因にもなります。両方を組み合わせることで、無理なく続けられる減量を目指しやすくなります。

肥満症診療ガイドライン2022では、1日に食べるエネルギー量の目安も示されています。 ただし必要な量は、年齢や体格、持病によって変わります。自己判断で極端に食事を減らすのはやめましょう。 食事の内容と量は、医師などの専門家に相談して決めることをおすすめします。

生活習慣の改善だけで足りない場合

食事療法・運動療法を続けても効果が十分でない場合は、医師の判断で薬物療法を組み合わせることがあります。 肥満症に使われる薬には、ウゴービ(一般名:セマグルチド、GLP-1受容体作動薬)とゼップバウンド(一般名:チルゼパチド、GIP/GLP-1受容体作動薬)があります。

どちらの電子添文にも、肥満症への使用は「食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない場合」に限ると書かれています。 薬を使う場合も、食事療法と運動療法は続けます。 (出典:ウゴービ電子添文、ゼップバウンド電子添文)

主な副作用には、吐き気、下痢、便秘、嘔吐などの胃腸の症状があります。 糖尿病の薬と一緒に使う場合は、低血糖のリスクにも注意が必要です。必ず医師の診断と管理のもとで使います。

運動を始める前の注意点

運動療法は、誰にでも同じやり方が合うわけではありません。 次に当てはまる方は、運動を始める前に主治医に相談してください。

  • 心臓病(狭心症・心筋梗塞・心不全など)がある、またはあった方:運動の強さを決めるために、検査が必要になる場合があります
  • 血圧が高い方:重い負荷の筋トレや、息を止める動作で血圧が上がりやすくなります
  • 糖尿病の薬やインスリンを使っている方:運動中や運動後に低血糖を起こすことがあります
  • 膝や腰に痛みがある方:体重がかかる運動で、痛みが悪化することがあります
  • 脳卒中・腎臓病の治療歴がある方、健康診断で要精密検査などの判定が出た方

膝に痛みがある場合は、主治医と相談のうえで、水中ウォーキングや自転車こぎなど体重がかかりにくい運動を選ぶ方法もあります。椅子に座ったままの運動も選択肢です。

運動中に次のような症状が出たら、すぐに中止してください。

  • 胸の痛みや締めつけ感
  • 強い動悸や息切れ
  • めまい、冷や汗、ふらつき

症状が続くときは、早めに医療機関を受診しましょう。

続けるためのコツ

運動療法でいちばん大切なのは、続けることです。 次の5つのコツを試してみてください。

  1. 最初の目標を低くする:まず「今より10分多く歩く」から始めます
  2. 日常の動きを増やす:階段を使う、1駅分歩くなど、生活の中の活動も立派な運動です
  3. 記録をつける:歩数や体重を記録すると、変化に気づきやすくなります
  4. 時間を決める:「朝食後に10分」など、いつ動くかを先に決めておきます
  5. できなかった日を責めない:1日休んでも、翌日からまた再開すれば大丈夫です

行動療法では、こうした小さな目標と記録を積み重ねることが重視されています。 完璧を目指すより、「8割できればよい」と考えるほうが長続きしやすくなります。

まとめ

肥満症の運動療法のポイントを振り返ります。

  • 有酸素運動は1日30分以上を毎日、または週150分以上が目安(肥満症診療ガイドライン2022)
  • 筋トレは週2〜3日、息を止めずに軽い負荷から
  • 食事療法・行動療法と組み合わせ、無理なく継続できる形を探す
  • 心臓病・高血圧・膝の痛み・糖尿病の薬がある方は、始める前に主治医へ相談

食事療法と運動療法を続けても効果が十分でない場合は、医師の判断で薬物療法を検討することもあります。

スリマルは、株式会社MICINが運営する肥満症のオンライン診療サービスです。診察はZoomのみで行います。 自由診療のため保険は使えず、費用は全額自己負担です。対面診療と保険診療は行っていません。 処方する薬はウゴービとゼップバウンドで、医師が肥満症と診断した方が対象です。

次の方は処方の対象外です。

  • 20歳未満の方
  • BMIが27未満の方(初診時)
  • 美容目的・痩身ダイエット目的の方
  • 糖尿病の薬(ビグアナイド系薬剤、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジン系薬剤、DPP-4阻害剤、SGLT2阻害剤、インスリン製剤など)を処方されている方

妊娠中または妊娠の可能性がある方には、どちらの薬も使いません。 効果や副作用には個人差があります。治療を受けられるかどうかは、医師が診察して判断します。

自分が肥満症の治療の対象になるか知りたい方は、まずは医師に相談してみてください。

免責事項

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の治療効果を保証するものではありません。治療の適応は個別の診察により判断されます。効果・副作用には個人差があります。気になる症状や治療をご検討の方は、必ず医師にご相談ください。

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