ここで「肥満」と「肥満症」の違いも押さえておきましょう。 日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」では、次のように定義されています。
- 肥満:脂肪が過剰にたまった状態で、BMI 25以上のもの
- 肥満症:肥満に加えて、高血圧や脂質異常症など肥満に関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量が必要な状態
肥満症の方は、自己流ではなく医師の診断のもとで治療方針を決めることが大切です。
BMIや肥満症が気になる方へ。糖質制限と低脂肪食の比較研究を出典付きで整理し、長期では差が小さい理由、糖尿病薬使用中や腎臓病がある場合の注意点、続けやすい食事法の選び方を解説。迷ったら医師に相談を。
医療監修
肥満症・代謝疾患領域の医療情報について、医療ガイドラインおよび医学論文を参考に編集しています。
本記事は肥満症治療に関する医療情報を提供するものです。GLP-1受容体作動薬などの薬剤には副作用やリスクがあります。治療効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。詳細は医師にご相談ください。
公開日: 2026-10-27
結論から言うと、糖質制限は減量の選択肢の一つになりえます。 ただし、1年以上の長期で見ると、低脂肪食との差は小さいと報告されています。 体重の変化を左右するのは「どの食事法か」より、「無理なく継続できるか」だと考えられています。
ここで「肥満」と「肥満症」の違いも押さえておきましょう。 日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」では、次のように定義されています。
肥満症の方は、自己流ではなく医師の診断のもとで治療方針を決めることが大切です。
糖質制限とは、ごはん・パン・麺類・甘い物などに含まれる糖質を減らす食事法です。 低炭水化物食とも呼ばれます。炭水化物は「糖質+食物繊維」のことです。
研究者の間では、糖質の量によって次のように分類されることがあります(Feinman RD, et al. Nutrition. 2015;31:1-13)。
| 分類 | 糖質(炭水化物)の目安 |
|---|---|
| 中等度の糖質制限 | 総エネルギーの26〜45% |
| 低糖質食 | 1日130g未満、または総エネルギーの26%未満 |
| ケトン食(極端な制限) | 1日20〜50g、または総エネルギーの10%未満 |
ケトン食とは、糖質をほとんど取らず、脂肪の分解でできる「ケトン体」を主なエネルギー源にする食事です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、炭水化物の目標量を総エネルギーの50〜65%としています。 肥満症診療ガイドライン2022でも、食事療法の栄養素配分として炭水化物50〜65%が目安として示されています。 つまり、日本の基準と比べると、強い糖質制限は目安から大きく離れた食べ方だといえます。
結論として、1年以上の比較では、低糖質食と低脂肪食の体重変化の差は小さいと報告されています。代表的な研究を見てみましょう。
| 研究 | 対象・期間 | 主な結果 |
|---|---|---|
| DIETFITS(Gardner CD, et al. JAMA. 2018;319:667-679) | 糖尿病のない18〜50歳の成人609人(BMI 28〜40)、12か月 | 体重変化の平均は低脂肪食で−5.3kg、低糖質食で−6.0kg。統計的に意味のある差なし |
| DIRECT(Shai I, et al. N Engl J Med. 2008;359:229-241) | 中等度肥満の成人322人(86%が男性)、2年 | 体重減少の平均は低脂肪食2.9kg、地中海食4.4kg、低糖質食4.7kg |
| POUNDS LOST(Sacks FM, et al. N Engl J Med. 2009;360:859-873) | 過体重の成人811人、2年 | 脂質・たんぱく質・炭水化物の配分が異なる4つの食事で、2年後の減量幅に統計的に意味のある差なし |
| メタアナリシス(Tobias DK, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015;3:968-979) | 1年以上追跡したRCT 53件(計68,128人)。このうち減量を目的に低糖質食と低脂肪食を比べた18の比較 | 低糖質食は低脂肪食より平均1.15kg多く減少(95%信頼区間0.52〜1.79kg) |
いずれの研究も平均値であり、効果には個人差があります。 また、多くは海外の研究で、日本人にそのまま当てはまるとは限りません。
糖質制限には、取り入れやすい面もあります。
「主食を半分にする」「甘い飲み物をやめる」など、ルールがわかりやすい点が特徴です。 カロリー計算が苦手な方でも始めやすいでしょう。
清涼飲料水や菓子類は、糖質が多く、満腹感を得にくい食品です。 ここを減らすだけでも、食事全体のエネルギーを抑えやすくなります。
低脂肪食と比べて、中性脂肪(血液中の脂肪の一種)の低下やHDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)の上昇が大きかったとする研究があります(Foster GD, et al. 2003)。 一方で、11件のRCTをまとめたメタアナリシスでは、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が低脂肪食より上がりやすい傾向も示されています(Mansoor N, et al. Br J Nutr. 2016;115:466-479)。健康診断の数値と合わせて確認しましょう。
メリットがある一方で、やり方によってはリスクもあります。 特に極端な糖質制限は、自己判断で始めないことが大切です。
インスリンやスルホニルウレア剤などで治療中の方が急に糖質を減らすと、低血糖を起こすおそれがあります。 低血糖とは、血糖値が下がりすぎて、冷や汗、ふるえ、動悸、意識がもうろうとするなどの症状が出る状態です。
また、SGLT2阻害薬を使っている方は、極端な糖質制限でケトアシドーシスのリスクが高まるとされています。 ケトアシドーシスとは、血液が酸性に傾き、吐き気や腹痛、意識障害などを起こす危険な状態です。 日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」でも、極端な糖質制限は避けるよう注意が示されています。 糖尿病の治療中の方は、食事法を変える前に必ず主治医に相談してください。
腎臓病がある方は、糖質の代わりにたんぱく質を増やすと腎臓の負担になることがあります。食事法を変える前に、主治医に相談してください。 妊娠中・授乳中の方も、自己判断での食事制限は避けましょう。
厳しい制限ほど、反動で食べ過ぎてしまうことがあります。 「一生続けられるか」を基準に、制限の強さを決めることをおすすめします。
比較研究から見えてくるのは「誰にでも最適な食事法はない」ということです。 あなたの生活に合い、無理なく続けられる方法を選びましょう。
どの食事法でも、野菜・海藻・きのこで食物繊維をとり、たんぱく質を適度にとることが基本です。 肥満症診療ガイドライン2022では、肥満症(BMI 25以上35未満)の減量目標を「3〜6か月で現体重の3%以上」としています。 小さな目標を積み重ねることが大切です。
食事療法・運動療法を続けても十分な効果が得られない肥満症の方には、薬物療法という選択肢もあります。 ウゴービ(セマグルチド)やゼップバウンド(チルゼパチド)は、肥満症に対して承認された週1回の注射薬です。 電子添文上、これらは食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない場合に使う薬で、食事療法の代わりにはなりません。
主な副作用には、吐き気、下痢、便秘などの消化器症状があります。 低血糖、急性膵炎、胆嚢炎などの注意すべき副作用も報告されています。 使用の可否は医師の診察で判断され、医師の診断・管理のもとで使用します。
スリマルは、肥満症を対象としたオンライン診療(Zoomでの診察)です。 自由診療のため保険適用外で、全額自己負担となります。対面診療は行っていません。 処方対象は、医師の診断に基づく肥満症の方で、ウゴービ・ゼップバウンドを取り扱っています。
次に当てはまる方は、スリマルでの処方対象外です。
また、妊娠中または妊娠している可能性のある方には、電子添文上これらの薬は投与されません。
本記事で紹介した研究結果は平均値であり、同じ食事法でも結果には個人差があります。 「自分は肥満症にあたるのか」「どの方法が合うのか」と迷ったら、一人で抱え込まず医師に相談してみてください。
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の治療効果を保証するものではありません。治療の適応は個別の診察により判断されます。効果・副作用には個人差があります。気になる症状や治療をご検討の方は、必ず医師にご相談ください。